○真庭市手話言語条例

令和3年(2021年)3月12日

条例第11号

手話は、音声言語とは異なり、手指や体の動き、表情を使って表現し、目で見て理解する視覚的な言語です。

手話言語はろう者にとってコミュニケーションを図る手段であるだけではなく、物事を考え、お互いに気持ちを伝え理解する手段として生活に欠かせないものであり、ろう者は手話言語を通して自らを高め、文化を創造してきました。

しかしながら、昭和8年に全国のろう学校で手話の使用が事実上禁止されて以来、ろう者は手話言語を学ぶことのみならず、手話言語で教育を受けることもできず、口話教育を余儀なくされました。手話言語で学ぶ機会を奪われたろう者は、円滑にコミュニケーションを図り、人と人とが関わる力を養う機会や、手話言語を通して物事を学び考える機会をも得ることができず、ろう者の尊厳は著しく傷つけられました。

また、ろう者は手話通訳を介さなければ、手話を知らない人と満足に意思疎通ができないことや、外見からでは障がいが分かりにくいことから、ろう者とろう者以外の者との間で不安や不便さを共有できず、誤解や偏見、差別に苦しんできました。これにより、手話言語に対する理解や、手話言語を使用する環境整備が進みませんでした。

このような中、平成18年に、国際連合において、手話を言語として法的に位置付ける内容を含む障害者の権利に関する条約が採択されました。日本は、平成23年に障害者基本法を改正した上で、平成26年1月、当該条約を批准しました。これにより、日本においても手話が言語として法的に位置付けられましたが、いまだ十分に手話言語への理解や普及が進んでいるとは言えず、より一層、日常生活や社会生活の中で手話言語を使用できる環境の整備が求められています。

真庭市では、平成18年に手話通訳の資格を持つ職員を採用し、平成21年から県内で唯一正規職員として配置しました。ろう者や手話言語への理解を図り、ろう者に関わる施策を行政として、ろう者とともに積極的に取り組んできました。

真庭市は、手話が音声言語である日本語と対等の「言語」であるという認識に基づき、ろう者や手話言語に対する理解をさらに広げ、手話言語を使用できる環境を整え、市、市民、ろう者、事業者が一体となって、安心して暮らすことができる共生社会の実現を目指し、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、ろう者及び手話言語に対する理解の促進、手話言語の普及並びに手話言語を使いやすい環境の構築に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民、当事者及び事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もって全ての市民が人格と個性を尊重しながら、安心して暮らすことのできる共生社会を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによるものとする。

(1) ろう者 聴覚に障がいのある者のうち、手話を言語として日常生活及び社会生活を営む者

(2) 当事者 ろう者及び意思疎通支援者その他のろう者に対する支援を行う者

(3) 事業者 市内で事業を行う個人及び法人その他の団体

(基本理念)

第3条 手話言語の理解促進及び普及は、ろう者とろう者以外の者が相互の違いを理解し、その個性と人格を互いに尊重することを基本として行われなければならない。

2 手話言語の理解促進及び普及は、手話が言語であると認識し、ろう者が手話言語による意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利が尊重されることを基本として行われなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条の基本理念に基づき、ろう者及び手話言語に対する市民の理解の促進、手話言語の普及並びに手話言語を使いやすい環境の整備を図るため、必要な施策を推進するものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は、ろう者及び手話言語への理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

(当事者の役割)

第6条 当事者は、市が推進する施策に協力するとともに、障がい特性及び必要な配慮について発信し、ろう者及び手話言語に対する市民の理解の促進並びに手話言語の普及を推進するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、ろう者及び手話言語への理解を深め、市が推進する施策に協力するとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するための合理的な配慮を行うよう努めるものとする。

(施策の推進)

第8条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) ろう者及び手話言語に対する理解並びに手話言語の普及を図るための施策

(2) 手話言語による情報取得及び手話言語を使いやすい環境構築のための施策

(3) ろう児(18歳未満のろう者をいう。)の療育に必要な情報の提供及び相談体制の整備に関する施策

(4) 手話言語による意思疎通支援者の養成及び健康の確保に関する施策

(5) 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における手話言語による情報の提供その他のろう者への支援に関する施策

(6) 旅行その他の目的で、市を訪れたろう者への支援に関する施策

(7) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

(協議の場)

第9条 市は、前条に掲げる施策の推進について、必要に応じ当事者その他関係者の意見を聴くため、これらの者との協議の場を設けなければならない。

(財政上の措置)

第10条 市は、第8条に掲げる施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、令和3年4月1日から施行する。

真庭市手話言語条例

令和3年3月12日 条例第11号

(令和3年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第4節 心身障害者福祉
沿革情報
令和3年3月12日 条例第11号