| パネラー:大石 清子 (シイタケ栽培、勝山地区) |
| 安達 智子 (米屋、北房地区) |
| 古林(こばやし) 伸美(のぶよし) (湯原町旅館協同組合代表理事、湯原地区) |
| 山崎 茂 (旭川流域ネットワーク、久世地区) |
| 石倉 健一 (蒜山酪農農業協同組合生産課長、蒜山地区) |
| 三浦 明 (真庭市産業建設部長) |
| オブザーバー:井手 紘一郎 (真庭市長) |
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| 1)イントロダクション |
| 2)BDFについて |
| 3)木質ペレットについて |
| 4)畜産のし尿処理について |
| 5)食について |
| 6)質疑 |
| 7)まとめ |
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イントロダクション |
【澁澤】パネルディスカッションに入る前に、ここでどういうことをお話しいただくかという概要をお話ししておきたいと思います。
真庭市のバイオマスをどうやって利活用していこうかという取り組みには、いくつかの切り口があります。バイオマスをエネルギーとして利用しようという動き。バイオマスを素材として利用していこうという動き。それから素材をつくることによって、それをエネルギーに転化していくということもあります。
今日のパネルディスカッションでは、以下の3つのことに絞って、今どういう問題があるのか、どういう取り組みがされているのか、そしてどういう解決策あるいはどういう協働の仕組みが考えられるのかという話を進めていければと思っています。
1つは、北房や湯原で実際に行われていますが、家庭や事業所から出される植物性の油をエネルギーに変えていく取り組みについて。2つ目は、木質の部分をどうやってエネルギーとして利用できるのか。木質のものをエネルギーではなくて素材として利用したものとして、月田の工場でつくっているネコ砂があります。ヒノキの粉を珪藻土と一緒に固めたもので、インターネット通販の楽天で連続して優秀賞を取っています。大変売れていて、海外からもひっきりなしに引き合いがある商品に育っています。それも1つの素材としての利用です。また、粉をデンプンと一緒に固めたもの(ナプラス)が製品化しています。3つ目は、蒜山、落合、北房地区を中心に酪農や農業をやっている方々がたくさんいますが、どうやって酪農や農業から出る廃棄物を再資源化し、私たちの食の安全を確保していけるか。この3つの視点に絞って、ディスカッションを進めていきたいと思っています。
ただ、はじめてお顔を見る方もいらっしゃると思いますので、最初に、自己紹介を兼ねてご自身のお考えや取り組みなどをお話しいただければと思います。まず、石倉さんからご紹介いただけますか。 |
【石倉】蒜山酪農から来ました石倉と申します。蒜山酪農は牛乳・乳製品と一部、肉の生産もやっています。真庭市になって非常に範囲が広いのですが、現状では雪が1m位あって、久世からは想像がつかないような地域です。蒜山酪農の組合員は60名ぐらいいます。飼っている牛の数は3,000頭です。経産牛のジャージーが1,500頭、ホルスタインが570頭。親の牛が2,000頭位で、あとは仔牛です。
本日は、真庭市のバイオマスタウン構想の中で、家畜の糞尿の問題がどのようになるのかということで参加しています。頭数から換算すると、組合員のものだけで1日に150tぐらいの糞尿が出ているのではないかと思います。このほかに和牛がいます。あくまで蒜山地区だけですから、これを真庭市になおすと、相当なものがわれわれの産業からバイオマスとして出ているといえます。これを今後いかに有効に利用できるかということを勉強させていただくつもりで出席しています。よろしくお願いいたします。 |
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| ▲左から、澁澤寿一氏、井手紘一郎真庭市長、大石清子さん(勝山地区)、安達智子さん(北房地区)、山崎茂さん(久世地区)、石倉健一さん(蒜山地区)、三浦明真庭市産業建設部長 |
【山崎】旭川流域ネットワークの一員には間違いないのですが、本来の事務局は国土交通省の河川工事事務所にあります。私は数年前にたまたま旭川源流の碑を旧久世町内に建てるときの地元の事務局をしたのが縁で、そういう名前で出させていただいていますが、私自身は単なる百姓をしていて、山もいくつか持っていますので、バイオマスの生産者という立場です。
先ほどの澁澤先生の講義をお聞きして、私は40年よりはちょっと長く生きていますが、まさに自分の人生の歩みを再現していただいたような気がしています。小学校の頃には車が通るのが珍しくて、車が通っていると、後をついていって排気ガスの匂いをかいで回ったのを未だに覚えています。そういう世代です。
そういうことが起こると同時に、山に人が入らなくなってしまった。それも入らなくなる前にいわゆる植林政策があり、真庭は日本でも有数の人工林地帯になっているのですが、スギやヒノキの植林をして、金を追い求めるサイクルの中に入らされてしまったわけです。これも当時、国策で行われて、しっかり補助金を出していただいて、当時の久世町あたりも採草地を払い下げてどんどん植林にしてしまった。それまでの薪の生活を、いっぺんに植林に切り替えてしまった。私はミツマタも生産していますが、ミツマタもほとんどなくなってしまいました。あたり一面スギとヒノキだけです。一昨年、台風で壊滅的被害を受けた箇所も多くあります。
そういったことで現在に至っているわけですが、子どもたちには地域で自信と誇りを持って生きていってほしい。地元の資源に基づいて、地元の産業にもう一度切り替えていきたい。そういう思いで、バイオマスの構想に大いに期待をしているところです。自分の立場でどういったことができるかを自問しながら、皆さんとともに考えていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 |
【古林】湯原町旅館協同組合代表理事をしている古林です。湯原温泉の中で一番小さな「プチホテルゆばらリゾート」という宿をやっています。
温泉街を何とか活性化していこうということで、今から20年ほど前からいろいろと知恵をしぼってやっています。近年になって気づいたことは、やはり原点に立ち返ろうということです。テレビなどで結構有名になったのですが、温泉指南をやっています。要するに健康的で安全な入浴法や温泉を使った療養にもっと前向きに取り組んでいくことを全面に打ち出して、まちづくりを進めている最中です。
いろいろやっていると、やはり環境の問題にどうしても関わってきます。お客様がたくさんお見えになって下さるのですが、癒される場所は川であり山であり、そういったものが重要なコンテンツになるわけです。それが荒れたままではいけない。そういう中には、我々にも大いなる責任があります。年間、宿泊者数は20万人強、来湯者は65万人です。
実は真庭市は岡山県一番の観光地だということを、皆さんご存知でしょうか。蒜山、勝山、北房、落合、久世、美甘など、真庭市全体では年間400万人というお客様がお見えになっています。倉敷は370万人で、何と倉敷を抜いているのです。今まで岡山県のイメージというと、白桃やマスカットであり瀬戸大橋で、後についてくるのが倉敷、その後が後楽園位で、蒜山は名前が売れていますが、真庭はまずありません。
これだけの方がお見えになる場所ということで、我々、観光に従事する者も、それだけの皆さんを賄う部分にたくさん関わってくるわけです。私どもの業界は競争が大変激化しています。各地で大きな旅館がばたばたと潰れているのは最近のニュースでよくご存知だと思いますが、地域間競争が進んでいます。昔のような大きな利益があげられる商売ではありません。小さいところから積み上げてがんばっています。
その中で最近、問題になっているのはゴミの問題です。従来、出ていたお客様の残飯などは、お金をかけて処理しなければいけない時代になってきたのです。その中の1つに天ぷら油があります。生ゴミ全般にコストがかかわっているわけですが、特に油は水ものなので処理をするのに大変面倒です。従来は、お金をかけて業者に引き取ってもらって処理していました。捨てるためにもコストがいったということです。しかもやはりいい油を使わなければいけないので、大量に天ぷら油が出てきます。そのあたりを何とかできないかということで、エコディーゼル燃料(BDF)を今、一生懸命に進めているところです。今日はご一緒に勉強させていただきますので、よろしくお願いいたします。 |
【安達】市民を代表してということで、南の玄関口である北房地区から出席した安達です。
最初に参加した段階では「バイオマスとは何?」という感じで、言葉を聞くこと自体も初めてのような段階でしたが、真庭地区内を見学したりいろいろと勉強していくうちに、ペレットストーブとかペットのトイレの砂、天ぷら廃油を使った自動車が動いていることが分かりました。市民の生活のレベルで、それらをどのような感じで使っていけばいいかという立場に立って勉強したいと思っています。ペレットのストーブとかペットのトイレの砂とか天ぷら廃油に至っては、主婦の立場でこれからいろいろな方法で携わっていけると思いますので、よろしくお願いいたします。 |
【大石】勝山から参りました大石です。私は1回もお勤めをしたことがない、専業農家の一主婦です。家の仕事は農林業で、シイタケが基幹作物です。
私が結婚した40年ちょっと前のことを思い出すと、その頃はバイオマスという言葉がありませんでしたが、澁澤先生のお話の通り、バイオマスにどっぷりと使った自給自足的な生活をしていたなと思います。というのは、山は半分ぐらいが広葉樹のクヌギ、ナラの山でした。それを切って炭を焼いて、炭のこたつで暖房をとっていました。木を切ったあとに、スギやヒノキの植林政策もありました。その後、減反政策が入ってくると、山奥の田んぼを廃田にして当然のごとくスギやヒノキを植えて、猪や猿の居住区をなくす事態へ追いやったのだなと思っています。
私は勤めに出ませんでしたので、家のお爺ちゃんについて山に行き、皆さんが想像しないような仕事もしてきました。はしごをかけて上にあがって、枝打ちもしました。一昨年の台風で40年、50年、60年経った木は見るも無残に倒れてしまい、本当に山がガタガタになってしまいました。そういった中で、集落内の女性はそれほど感じないでしょうが、私は山に行って木が相手の仕事をしていたものですから、木が可哀想という実感があるのです。今もって山に倒れた木が放置されていたり、お金にならない木がいっぱいあります。そういった木は可哀想だなと思って眺めています。それを自分がどうすることもできないので、業者の方が片づけて下さるのを待つような状態です。これが何とかならないかなと思うこの頃です。
私の家は今もって、シイタケのほだ木などをお風呂の燃料にしています。ペレットを視察して「いいな」とは思うのですが、家はこの薪に限ると思っています。それから使った灰は、友だちから「わらびを茹でるから灰をちょうだい」と言われます。こういった状態で、私の生活はバイオマスの中に少しは入っているかなと思っています。
いい機会なので宣伝をさせていただきます。私は農産加工のグループをつくっています。3月になると、おひな祭りが勝山で開催されます。そのときに、私たちの手づくり加工品や自然の素材を使った農産加工品を販売します。生産関係者一同、頑張りますので、どうぞ大勢でお越しください。 |
【澁澤】生産加工品あるいは生産物を直接販売する産直の昨年度の売上は、全国で約4,000億円と言われています。JAみやぎが約2,200億円です。人々の1つ1つの積み上げが、ばかにできない数字になってきているのです。「主婦がものを売ってなんぼになるんじゃい」と思われるかもしれませんが、少なくとも農業の世界では、それが世の中を動かし始めています。バイオマスの世界でも背中を押される気分です。 |
【三浦】なぜバイオマスタウンかということについては、澁澤先生や先ほどの画像などで紹介があった通りです。国が言っているバイオマスタウンの定義づけがあります。1つ目は地球温暖化の防止、2つ目は循環型社会の形成、3つ目は新たな産業の創出、4つ目は農村の活性化です。この4つの中で、私は、循環型社会の形成に着目して定義として持ちたいと考えています。循環型社会を形成するということはバイオマスを使うということですから、当然、地球温暖化の防止になります。それからバイオマスをエネルギーに転換する工程で新たな産業が生まれる可能性もあるし、期待もしています。これが農村の活性化につながると、私なりに思っています。 バイオマスの利用はまさに地産地消であることは、今さら申し上げるまでもありません。北房地区では、廃食油を使った燃料をクリーンセンターのゴミ収集車のエンジンの燃料にして、数年前から走っています。産業団地ではエタノール3%混合ガソリンの取り組みが既になされています。NEDOの事業としては、真庭市と林業関係者あるいは森林組合が連携を取って実証実験を始めようとしています。木、畜産関係、廃食油などいろいろありますが、できるところからやっていくのも大切なことではないかと思います。
それからもう1点。市町村合併のスケールメリットを生かすことも大切ではないかと思っています。合併を機に、例えば木質系のバイオマスを使った循環型社会の中の産業を形成していく。こういったスケールメリットです。つまり今までは9つのそれぞれの自治体が予算を持っていますから、連携を取ろうと思っても、やはりそこには見えない垣根があったことは否めないと思います。この垣根がなくなったので、大きな広い自治体をうまく活用したスケールメリットが出せるという提案もできるのではないか。いや、していくべきだと、私は考えています。
そこで大切なことは、地域の皆さん、企業の方々、自営の方々、行政によるコミュニティの形成が重要ではないか。つまり共通認識を持った集団の形成が大切と思います。その中では、それぞれの役割分担が必要です。我々行政の役割分担として考えられる1つは、一定の財政支援です。それから大きなことをやっていくための、最終的な舵取りです。これは行政が全てを舵取りするということにはなりませんが、その中にも参画していく。舵取りのためには沢山の情報がいると思います。情報を集めないと巧くいきません。海を航海していくにも、やはり情報がないと巧く舵取りができません。あとで後悔してもいけないので情報を集めるということになると思います。後はコミュニケーションです。行政はPRが下手だというご指摘をたびたび受けるのですが、この辺も勉強しながら、PRや情報伝達が必要ではないかと思います。
いずれにしても、真庭市には沢山の山があります。8割が山です。山には水源涵養や生態系の保全など、多面的機能があります。こういったものを守っていく。つまりバイオマスの利活用によって山の保全もできるのではないか。我々の時代が、子々孫々にどういったものを残していくのかということが大切だろうと思います。子どもたちが山や川で遊べる環境を残していく。これがバイオマスの利活用で保てるのではないかと思っています。 |
【澁澤】皆さんから一通り、自己紹介を兼ねてご発言をいただきました。
今、三浦部長からスケールメリットというお話が出ました。製材所を中心として、廃棄物として出されているバイオマス量は年間約13万tといわれています。畜産関係も、先ほどの石倉さんの数字だけを合計すると約6万tですから、おそらく他の畜産関係の方々を含めると10万t近くの数字だと思います。これがどういう数字かというと、少なくとも木質に関しては、普通の木材の集積地や製材所の集積地の約10倍の数とお考えいただければいいと思います。
実は国の指定しているバイオマスタウンは、廃棄物として捨てられているものの9割を再利用することを目標としなさいという話になっています。ここで9割を再利用すると、本当に膨大な量です。例えば真庭地域内の昨年のペレットの生産量は約1,000tだといいます。まだ1,000tかと思われるかもしれませんが、真庭地区以外の日本全国のペレットの昨年1年間の流通量は2,000t位です。それぐらい、真庭地区は膨大なバイオマス量があるのです。
今日この会場には、経済産業省や農水省あるいは局の方も来ておられますし、東京ガスさんはじめ企業の方も来ておられます。外の地域から見ると、膨大な資源の山なのです。真庭がなぜこれだけ注目されるのか。実は私たちは気づかなかったけれども、ふと振り返ってみると、真庭はゴミとして出しているバイオマス量が、日本一豊富なところであり、しかもそのほとんどがピュアな素材なのです。化学物質などがあまり混じっていない、純粋に自然の中で生産されてきたものだけがこれだけ集まっている。そのために、いろいろなところから大変注目されているのです。真庭でバイオマスがちゃんと利用できなかったら、日本で利用できるところはどこもないだろう。これは皆さんがおっしゃいます。
今まで私たちが山のように出していたゴミを、何とかして山のような資源に変えていきたい。それがこの構想に携わっている者全員の共通した夢です。 |
2)BDFについて |
【澁澤】それでは今日の本論に入らせていただきます。
BDFという聞きなれない言葉を、今日はじめてお聞きになった方もいらっしゃるかもしれません。地球にやさしい、生態系に負荷をかけない形のものをディーゼルエネルギーに変えていこうという活動があります。私は旧勝山、久世、落合の方々とはいろいろな形で仕事をさせていただきましたが、そういう活動が実際に北房や湯原にあったということは、お恥ずかしい話ですが、合併して初めて知ったのが現状です。
その辺も含めて、まず安達さん、北房のBDFの工場をごらんになったと思いますが、ひょっとしたら北房の方もご存知なかったかもしれません。その辺を皆さんにご紹介いただけますか。 |
【安達】現在、地区内では年4回ほど、各家庭でペットボトルに廃油を集めて、それが普通のゴミ収集車で回収されています。それを知っている方は、町内でほとんどいないのではないかと思います。私も廃油をペットボトルで集め出したことは聞いたのですが、いつ回収するかという一覧表が来るものの、その日がいつかなという感じで、放送があったときに出す形です。町内を歩いてみても、ペットボトルの中に入れて出しているものはほとんどありません。ゴミ収集車自体が廃油を利用して町内等を動いているというのも、今回、見学してお話を聞いて分かった状態です。
皆さんに集める方法等を周知徹底する。貴重なガソリンを使わなくても、身近な材料で車が動くのだということを皆さんに知っていただく。今は廃油をゴミとして固形にして捨てている方がほとんどだと思うので、そういうところは今回、バイオマスに参加して、一番取り組めることではないかと思いました。 |
【澁澤】主婦の視点からでしたが、考えてみたら、この会場もほとんど男性なのです。バイオマスタウンとか環境というのは、この会場の半分位が女性で埋まるようにならないと、町としては回っていかないと思うのです。その辺も、ぜひ皆さんのお知恵を拝借できればと思います。
それでは事業家の視点から、古林さん、事例をご紹介いただけますか。 |
【古林】先ほどのあいさつの中でもお話ししましたが、本当にゴミは厄介ものです。これを資源化できるということは大変ありがたいのです。今までは、大量の天ぷら油を使ってそれを捨てるのに、相当な費用がかかっていたわけです。今現在は、油を捨てるのではなく再利用すると、逆に私どもに1?当たり10円の収益となる仕掛けになっています。さらに大量に出すわれわれのような業者は、燃料化した油を優先的に分けていただけます。実はこの部分が重要で、需要と供給のバランスが取れないと、この事業はなかなかうまく進まないのではないかと思っています。
湯原温泉の旅館の場合、現状、集まっているのは1カ月250?ですが、今の調査によると、4月からは1カ月400?が集まりそうです。周辺の給食センターや学校関係、商店等のご協力を得ると、周辺だけで1,000?は大丈夫だろう。この1,000?の廃食油の9割近くが燃料になると聞いています。ということは800?は大丈夫で、1?当たり10km走るとすると8,000km走るわけです。
天ぷら油を使った燃料を我々はEDFと呼んでいますが、一般的にはBDFの方が通りがいいようです。その燃料は、まず二酸化炭素が理屈上はゼロ。そして硫黄酸化物はなし。スモッグの原因をつくらない。煤煙も何分の1かに減るということで、環境に良いわけです。環境に良いなら、自分たちで作った燃料を自分たちの町で使おう。バス停への送迎用や従業員の送迎用で考えると、小さな町はもちろん、真庭市内で考えてもそんなに距離はないと思うのです。その小さな範囲で考えると、8,000kmは相当な距離数です。
これは一温泉地でスタートした事業ですが、この事業が真庭全域に広がって、こういうものはスケールメリットが出てくるので、いろいろな地域からこちらに集まってくる。再生するのは真庭が一番技術が進んでいるとなっていけば、真庭の産業としても成り立つのではないか。菜の花プロジェクトという名前もあったと聞いていますが、生産した油をそのまま燃料にするよりはいっぺん天ぷらであげてから燃料で使うと、ほとんどロスなく使えるし環境にもいい。しかも安上がりで収益があがります。
もう1つ言うと、実は今、油を10円で買い上げて、75円で燃料として売っています。最近、私は100%天ぷら油で走っているので軽油の値段を知らないのですが、今、軽油は100円ぐらいするはずです。そうすると?当たりの走行距離も変わらないで、特にデメリットもない。すでに京都は先進で、二酸化炭素削減の京都議定書以来、盛んに使われていますから、もう恐れる時代ではないわけです。
唯一、心配なのが、こういった新たなことを始める場合には、どうしても従来の抵抗勢力が現れてくることです。具体的にいうと、私どもは今まで油をお金をかけて捨てていました。従来、集めている業者さんがいろいろな風評を出しています。「天ぷら油を使いよったら車が早よぅめげるで」といった話が出てくるわけですが、「放っておいてくれ」と思います。まず自分の車を皆さんに見てもらおうということで、今日はロンドンタクシーを持ってきました。玄関先でずっとエンジンをかけっぱなしにしていますので、匂いでもかいでみて下さい。これから真庭全域を走り回りますので、あの車は走っている、大丈夫だなというのを見ていただけたらと思います。
この事業にコンビネーションで取り組んでいるエコライフ商友の河野社長がお見えになっているので、買い上げの仕掛け、集める仕掛け、製造過程などをお話ししていただきたいと思います。 |
| 【澁澤】さぞかしすごい大掛かりな機械だと皆さん思われていると思いますので、その辺も含めて、お願いいたします。 |
| 【河野】久世町の有限会社エコライフ商友の河野と申します。旅館組合さんと廃食油のリサイクルを協働してやっています。 |
【古林】協働というと聞こえがいいのですが、うちは何もしていないのです。油を集めて、今までの抵抗勢力である業者さんから、エコライフ商友さんに油を出すだけです。そこから先は集めるほうも油を配達するのも、エコライフ商友さんでやってくれています。
ここですごいのは、民間レベルでやっていることです。「採算ベースに合わせていこう」、要するに「今でも何とかこれでいけるだろう」というところがすごいと思っていただけませんか。国の補助金事業でやるとか金をかけるというのは、継続性がないわけです。単年度で終わったり、補助金が終わればそれまでよ、ということなのですが、これはずっと続けていこうと思えます。しかも環境に良いということで、今、いろいろな仕掛けを企てています。
先ほど、10円のバックがあると言いました。1カ月100?出れば1,000円です。その位の金額なので、ではこれを教育関連に寄付したらどうかという話が旅館組合でできて、各旅館も「それ位のお金だったらエコライフ商友さんの方でまとめてもらって、それを学校の図書などに使ってもらう仕掛けはできないだろうか」となっています。その、いいネーミングも彼が考えています。 |
【河野】最初は「エエコブック事業」です。ブックは、子どもたちの環境教育には本が一番分かりやすいと思ったので入れました。エコという有名な言葉は、真庭の方言でいえば「エエコ=良い子」です。真庭に住んでいてよかったなと思ったのですが、「エエコブック」も使えないかと思いました。これはまだネーミングを考えている段階なのでまだ決まってはいないのですが、そういったことも考えて、子どもたちが簡単に興味が持てるようなことをしていこうということです。
私どもの廃食油のリサイクルは、子どもが地元ですべてを見ることができます。普段、廃棄物の中で“もっぱら物”として扱われている段ボール等は子ども会等を利用して集めていると思いますが、結局は業者に買い取ってもらって終わりとなっています。その先にどうなっているかは、子どもたちはたぶんはっきりとは分かっていないのではないかと思います。廃食油は、子どもたちが家から持ってくることもできます。それを回収して精製するところも、私どもやコスモスさんで見ることができます。それを使用する車として、ロンドンタクシーもあるし、私どもでも2台ほど使用しています。コスモスさんのゴミの収集車や、市のバスにも使っていただければと思っています。
それらをすべて子どもたちの周りで循環させて見学してもらうことができます。これが一番環境教育につながると思っています。 |
【古林】こんなにいい事業を、たかだか一温泉地と個人の企業でやるのはもったいないということで、NPOでもつくって皆さんに参加していただいてやっていくという形を、今、一生懸命に模索しています。目の前で実際にやってみないと実感がわきませんので、そういった具合で広げていきたいと思っています。
それからもう1つ言っておきたいのは、真庭は旭川の源流域になるわけですが、実際問題、天ぷら油は家庭でどうなっているか。ある数字によると、半分は業者さんがちゃんと回収しているのですが、残り半分のうちの半分、25%は、現実にはテンプルで固められていない。川に流されているのが現実と聞いています。それが学校の本になったら素晴らしいじゃないですか。目の前の車が走ったらもっと素晴らしいじゃないですか。そういうことを皆さんと一緒に進められたら素晴らしい。一旅館組合とエコライフ商友さんとの事業で始めていたのですが、とりあえず何とか回転できるぞというところなのです。
目安としては、あと何?ぐらい集めたらいいのですか。 |
【河野】今現在、湯原旅館さんからは300?程度。春からは400〜500?集まるだろうと予測しています。それと真庭市の飲食店の皆さんから、月1,000?を超える量を集める予定が立ちました。合わせると、1,500、1,600から2,000位はいくのではないでしょうか。それに家庭の油を集めて、5,000?位は目標にしたいと思って動いています。
一般家庭の方は私どもでは集めるシステムをつくれませんので、ここにおられる方々、真庭市の方々、行政の方々にご協力いただいて、ぜひ油を1滴も残らないほど集めてディーゼル燃料に精製したいと思っています。よろしくお願いいたします。 |
▼BDFで走るロンドンタクシーと商友の業務用車両 |
【澁澤】お話を伺っていて、最初のうちは「これはすごくいいシステムだ」と皆さん思われたと思います。まさに自分たちのところで走る車が自分たちの天ぷら油の使い残しで動くというのは、みんな感激する美しい話です。
これができるキーポイントは、集めるという行為なのです。集めるという行為は、流しに流すという行為より面倒なのです。バイオマスタウンにできるか、できないかは、その辺の面倒さを厭うか、厭わないかなのです。その辺の面倒さを厭うか、厭わないかが、子どもたちが大きくなったときにまともな真庭になるか、ならないかのきっかけになるでしょう。本当に生活の中のわずかなきっかけです。それをぜひ、バイオマスあるいは環境問題を進めるときにお考えいただければと思います。
希望の持てる良い話をありがとうございました。ぜひ民間ベースで継続できるようにして欲しいと思います。また、事業所から集める量と同じぐらいの量を一般家庭から集めなければいけないというお話です。それが集められるシステムと、ちょっとでもいいからそれに協力してやってみよう、孫たちのためだ、あるいは子どものためだと思う勇気を持っていただければありがたいと思います。 |
木質ペレットについて |
【澁澤】今度は木質のペレットストーブのお話にいきたいと思います。
木質のバイオマス利用はいろいろなところで出されていますが、真庭地区は木質資源が集まっているところです。これを有効に利用することは一番重要なことです。
ただ、間違って戴いては困るのは、50年かけて育った木は50年かけて使ってあげるのが一番良いのです。これは間違いありません。燃料にしてしまうのは、本当は愚の骨頂です。けれども廃棄物として捨てるならば、それを燃料に有効利用しようという考え方です。50年育った木を50年ちゃんと利用するためには、やはり木材業や建設業など、要するに地元の材で家を建ててそれを何百年も使っていくという部分がしっかりしていかないといけない。今日ずっとお話ししていることは、今まで廃棄物として出されたものをどうするかという静脈の話なのです。やはり動脈ありきで静脈が初めて成り立つということですから、本業の未来がどうやったら見えるかということがもう1つの議題なのですが、今回のシンポジウムではそこまでやっていると時間がないので、出されている廃棄物をどう再利用していくかということを考えます。
先ほどご紹介いただいたスライドも含めてもう1回整理をしていただく意味で、ペレットの全体の動きやペレットストーブについて、三浦部長から口火を切っていただけますか。 |
【三浦】ペレットストーブはまだよく知られていないと思いますが、使うより前に普及しなければいけないし、普及する前にPRがいるのです。9町村の合併で予算の関係があるので確定的なことは言えないのですが、人が集まる出入りの多い公共施設に、ペレットを順番的に置いていこうという計画でいます。
関連して申し上げると、ペレットストーブはかなり高いし、燃料になるペレットも高いということは否めない事実です。ペレットは廃材を利用していますが、山から出してくる運搬収集コストが非常に高いというのが、木質バイオマスの短所になります。それから燃料にしか使えないということや、使いにくいということもあるかもしれません。けれども環境のためには、これからこのことをやっていかなければいけないという気持ちにならないといけないと思います。
それからもう1つは、林業関係者や山林所有者にもいくらかの儲け──という言葉が良いか悪いかは別として──が幾分かないと、山も元気になりません。その辺のところを、うまく体系づくりをしていくことも大切です。時間があれば炭素税を取ってそちらに回してということもあると思うのですが、ペレットストーブに関してはそういう計画をしています。 |
【澁澤】ストーブだけではなくて、事業所ではボイラーで実際にペレットを燃やされています。ペレットストーブは冬の時期だけしか使えませんが、事業所で重油を焚いているところは木質系に移してもらうと、1年中、山のものが出ていきます。現在は確かに製材所から出ていく端材やおがくずを中心とした廃棄物ですが、それが地域内で普及してくると、要するにそれが燃料としてちゃんと使われてくると、量が出てくるので、山の間伐材や切り捨てて林地に置かれてきたものを利用できるようになっていくかもしれません。そうなれば山に光が入る。山に光が入ると山が活性化して、豊かな、成長量の大きい、CO2をたくさん吸ってくれる山に変えていくことができるというシナリオが、今のペレットのシナリオかと思っています。
さて、今、三浦部長からシナリオ側のお話をしていただきましたが、ペレットストーブだけではなくて、バイオマスをエネルギーとして利用したり素材として利用していてどんな感想をお持ちなのかということを、大石さんからお話しいただけますか。 |
【大石】実際には、山の木が放った状態で置かれているのが現実です。これをいかに出していくか。たぶん山元には入らないのではないかなという気がします。入らないのなら声にすればいいかというのがちょっとあれなのですが、声にするにしても、植林をしなければいけません。激甚災害を受けたということで市長さんもこの地域の復活に力を注いでくださって、高額の援助資金が出ているように聞いています。
そういったのもちゃんと復元をしなければいけないということで、また植林をするのです。50年かけてまた倒れるのかなと思うような気もしますが、それは別問題として、どうなのだろうなと。実際に山を持っている者としては山元に入るのかなという気はしますが、ペレットとして再利用できるなら、タダでもいいから片づけてもらったほうがいいかなというのが今の現実です。 |
| 【澁澤】大石さんのところは、まだ薪でお風呂を焚いているのですよね。 |
| 【大石】薪でお風呂を焚いています。シイタケのほだ木や、もとの大きなところはシイタケが植えにくいので、それを焚いています。その灰も畑に還元する形を取っています。ペレットにしたらいいのかなと思うのですが、コスト高かなという気がします。 |
【澁澤】薪の方が良いです。先ほど申しましたように、50年育った木はやはり50年使って、そして使えなくなったときには、手をかけないでそのまま燃してあげるのが一番いいのです。ペレットにするためには、無駄に手間をかけなければならないわけです。
どうしてもペレットでなければ使えない部分があります。例えば夜、寝ている間に自動的に燃えていなければいけないようなもの。工業用のボイラーや農業用のボイラーといったものは薪だと大変なので、ペレットだと思います。 |
| 【大石】シイタケの乾燥は専ら灯油です。灯油が高くなって、今年の採算は合うのかなというのが現実です。今は灯油も自動給油になっていますし、コンピュータ制御で自動消火・自動昇温という形になっていますが、もし自動的にそれができるとなった場合に、ペレットがどう対応できるのかということもあります。例えば温度が上がりすぎたときに、果たしてセーブできるのかどうか。たぶんコストが高いでしょう |
【澁澤】その辺の実験をしていこうというのが先ほどご説明のあったNEDOのことなのですが、こと燃料費に関しては、たぶんペレットの方が安くなっています。少なくともカロリーベースで考えると、灯油や、ひょっとするとA重油より安くなっているかもしれません。真庭で流通しているペレットは、工場渡しで25円/kg位で動いていると思います。それを灯油に換算すると35円位になると思います。これを自動車に積んで遠くまで運んでしまったらガソリン代が高くなってしまうので駄目ですが、少なくともランニングに関しては、真庭地域内で利用していく限りはだいぶ安くなってきています。
ただ、今おっしゃったような技術的な問題です。ペレットの場合は、温度を上げるのはできるのですが、熾(お)き火になってしまってすぐ温度を下げられないのではないか。それを今、ボイラーメーカーが実際にやっていて、たぶん大丈夫だろうという試作品がいくつか出てきています。今までの木材から農業の部分にどう使えるかというテストを、今度、市でやるNEDOの事業としてテストをしていこう。やはり農業の場合はランニングコストが非常にかかるので、ペレットを使うことによって抑えられれば、農業が一番メリットがあると思うのです。使う方にメリットがあって、山に返るのは一番最後なのです。それまで辛抱していただくしかないのですが、そこで皆さんにメリットが出てくれば、山に必ず返ります。 |
畜産のし尿処理について |
| 【澁澤】次に、畜産し尿処理をめぐってということです。蒜山が真庭市になり、大畜産地帯を真庭市は持つことになりました。しかもジャージー牛を中心とした畜産業は、全国から見て中規模あるいは中小規模の畜産のモデルにもされて、蒜山は畜産関係者の間では知らない人はいない地域だと伺っています。し尿処理をどのように考えているのかについて、石倉さんからお話しいただけますか。 |
【石倉】畜産・酪農の糞尿処理の問題ですが、莫大な量が出ると先ほど申し上げました。これについては、国のほうで糞尿処理を適正にしなさいという法律も決まりまして、各戸とも堆舎、尿溜め等の施設はできています。一部、堆肥センターもできて利用もありますので、適正に処理をする施設等は整っています。
ただ、365日、毎日出てくるものなのです。酪農家も自分の牧草地にまいて還元するとか、近所の田んぼや畑に譲るということがあるのですが、牧草を栽培するうえで堆肥が散布できるのは、牧草の刈り取り後や秋口など期間が決まっているのです。毎日出てくるものを置く施設は、かなり莫大なものがいります。これを優良な堆肥にしようとすれば、何らかの堆肥化を促進するような施設が必要なところもあります。特に大型にしているところは1日当たりの量が多いので、今の施設ではまだ十分堆肥ができないということがいえると思います。
バイオマスの話を聞く中で、循環型社会をつくるべきだということがあります。酪農イコール食料の生産です。食の安全とか地産地消が盛んに言われるのですが、食の安全という中では有機栽培・有機農法が推進されています。この有機栽培をするうえで、家畜の糞尿を使った堆肥は欠くことのできない資材の1つになってくると思います。
真庭市でもいろいろな作物をつくっている方たちがおられますが、そこに有機としての堆肥が十二分に行き渡っているとは思いません。堆肥を使ううえで、匂いの問題やかさばることも堆肥利用の妨げになっていると思いますが、果たして化学肥料を主とした農薬・農法でやっていって、循環型が保てるのか。化学肥料を使えば、当然そのぶん石油などの消費が多くなると思います。実際に中国や中東から化学肥料が来ることが最近多いと思います。こういうものを徐々に有機質のものに転換していくことも、地球規模から見たバイオマスの方向にならなくてはいけないのではないかなという気がします。
酪農の場合は、出る糞尿もそうなのですが、敷き料とするおがくずやバークの量も膨大です。その辺からも、出てきたものをちゃんと堆肥化できて、これが安全な食料の生産、また地球環境に負荷をかけない農法に普及していけば、もっともっと価値が上がるのではないかなという気がしました。 |
| 【澁澤】今、蒜山でつくっている堆肥は蒜山の中で消費されている現状ですか。 |
【石倉】実は酪農農業共同組合でも500頭ほどの子牛から育成牛の肥育の牧場を持っていて、ここでも堆肥を生産しています。大半は牧草地に還元するのですが、一部、野菜やハウストマトをつくっている人、それから花の苗をつくっているところにお分けしています。
川上の堆肥センターについては詳しいデータがないのですが、たぶん堆肥センターの方が、地域外にもかなり流通しているのではないかと思います。 |
| 【澁澤】いろいろな地域でよく聞く話ですが、堆肥の上手下手というのですか、完熟までどうもっていけるかの技術の差、あるいは施設による差は、今、蒜山では一応解決されているのでしょうか。 |
【石倉】堆肥センター等には堆肥化を進める施設があるのですが、個々の農家には堆肥化を進める特別の施設はないのです。堆積発酵に頼って堆肥化をするという手法なのですが、搾乳牛の場合、特に高水分なので、発酵するまでの水分調整が難しいのが現状です。
中には、水分調整のために近所で出ているエノキダケのエノキかすを使ったり、牛に食べさせない牧草類を混合していい堆肥をつくっている牧場もあるのですが、これも牧場の労力とか牛の頭数とか堆肥所の面積などいろいろな条件があるものですから、決してうまくいっている方ではないと思います。 |
| 【澁澤】先ほど衣食の話も出ましたが、堆肥の問題あるいは廃棄物の問題は、決して畜産業者だけの話ではありません。その辺の再利用も含めて、古林さんから湯原の夢をお話しいただけますか。 |
| 【古林】湯原温泉の場合は、健康づくりとか癒しを全面に打ちだして温泉街の発展を目指しています。今は温泉の指南役で一生懸命やっていますが、次に来るのは必ず「食」になってきます。現実、今やっていることはヘルシーメニューです。今まで温泉旅館に泊まると、あふれるほどの料理が出て、カロリー数がめちゃくちゃ高かったりするわけです。それを800kcalに抑えたメニューを組み立てて、それを1つのサービスとしてやっています。 |
今はなるべくならば地産地消でやっているのですが、さらに突きつめていくと、食の安全ということで生産者の顔が見えるという部分になってきます。現実に旅館組合の組合員の中にも、農家から田んぼを借りて自分でお米をつくっているところもあります。私のところも、ほとんどのお米は顔の見えるところで買い求めています。また、例えばキュウリ1本がこちらは105円、こちらは100円という次元の話なら、105円でも有機農法で育てられた野菜が求められています。
さらにいうと、生ゴミはわれわれ観光業者、特に食事を提供しているところでは大量に出てきます。食用油については1つの解決の糸口ができて進みつつあり、これはいけるなという手応えを踏んでいるのですが、お客様の残した残飯はかなりの量があり、これがコストを圧迫している部分でもあります。このあたりが糞尿の方とうまく一緒に処理ができないか。さらに木片も一緒にいけるのではないか。先ほど水分調整で木くずを使うというお話がありましたが、エノキもそうです。結局、木くずです。
特に私は糞と尿は別々に考えたのですが、モンゴルでは乾燥しているせいもあって、牛の糞を賄いの燃料にしています。朝餉夕餉の煮炊きを牛糞でしているわけです。これは水分量の問題だと思うのです。それこそバイオというのは、今のざっくりした話では食料油とか木くずという話をやっていますが、もう1つ、生物化学という部分の話もあると思うのです。こちらの方でうまく処理させて、自然発酵の中で水分を飛ばしてしまうのです。
木くずの話も畜産の糞尿の話も、輸送の問題があります。現地でないと、処理がしづらいのではないか。コストを圧迫する原因になるのではないか。では現地でみんなで使えるものに変換する。例えば私は木質ペレットにしてもそうだと思ったのですが、あれがホテルのフロントにあったらどうか。薪ストーブだったらおしゃれで格好いいのですが、木質ペレットはどうか。これはこれで環境問題に取り組んでいるという売りになると思いますが、一般の家庭でとなると、ちょっと使いづらいということがあります。
ではこれをいったん電気に変えたらどうか。昔だったら、旅館でも大きなボイラーや熱交換器を使って全館冷暖房でやっていたので取り組みやすかったのですが、今はお客様が個人化しています。旅館の場合、団体のお客様はほとんどいらっしゃいません。個人のお客様が主体になっています。そういったときに、どうしても暖房関係は個室での対応で電気のエアコンに頼ります。昔だったらボイラーでお湯を回したり冷水を回してすんだのですが、電気のほうが何かと便利がいい。そういったことで、何かヒントがあるのではないかなという感じを持っています。岩手ではそういった実験もやっていると聞いています。 |
【澁澤】発電の話は何回かこういうシンポジウムでもやっていますし、またいろいろな動きもあると思います。技術的にはたぶん可能なのだと思いますが、事業としてどう合わせていくか。それから電気は食べ物以上に生ものなので、どう扱うのか。それをガスとして利用する動きもあるように聞いています。
その辺も、いろいろな形で新しい技術がこの真庭から出ていけば大変ありがたいと思っています。 |
食について |
| 【澁澤】ペレット、木質の問題、家畜の糞尿の堆肥化の問題。両方とも最後は「食」につながっていく。人間が生きるという人間世界につながるお話ですので、農家の代表として山崎さんから、バイオマスと農業あるいは林業がどう結びつく可能性があるのか、夢と悩みを語っていただければと思います。 |
【山崎】先ほど来お話を聞いていて、地産地消とかコストの問題などいろいろ出てきたと思います。
私たちは地元の木を使って建てていただきたいということを、かなりしつこく要望してきました。今度、小学校を建てるときには地元の木を何本か使っていただけるようにはなったのですが、全面的には無理だということで、その辺にはやはり政治の力や規制の問題があると思うのです。国の政策として植林政策を進めてきたわけですから、その最後も政策的にトリを取っていただきたいという思いが大いにあります。山主になんぼ責任をいわれても、取ることはできません。そういうところにコスト負担を求めるのではなくて、自分たちでコストをいかに負担するかということを考えなければいけないのではないでしょうか。
有機野菜の問題にしてもそうですし、堆肥をつくるのでもにおいが出たりいろいろなことで、我慢も1つのコストだと思うのですが、誰もがコストをお互いに負担しないとできないのではないか。市長さんに頑張っていただいた森林税にしてもそうですが、他人事だと思っていられたのではどうしようもないのです。そこで暮らしていこうと思ったら、そこで暮らすためのコストをどうやって負担するかということをお互いに考えていただきたい。
今、アスベストが大問題になっていますが、私は、今、建てているプレハブ住宅は将来のアスベストになるのではないかとひそかに危惧しています。地元の大工さんが曲がった木を上手に使って建てていく技術を繋いでいかないと、この地域の将来の大きな屋台骨が揺らいでしまうのではないか。
そういう意味で私も、炭焼き窯を子どもたちに繋げていこうと、ささやかな努力を仲間と続けています。 |
質疑 |
| 【澁澤】会場の皆様で、ご質問や、これだけは言っておきたいというご意見がございましたら、どうぞ。 |
【会場】月田のネコ砂の関係で、新庄にある工場にヒノキの葉っぱを持っていき、50円/kg、5万円/tという値段で引き取っていただいています。軽トラックに大体500kg積めますから、いっぱい積んだら2万5,000円位になると思います。現在、ヒノキの葉っぱは在荷が安いことで山で木は放ったらかしになっているような状況ですし、若い者も、山は遠くからは見るけれども、実際に入ってやろうということにはなっていないと思います。
ヒノキには64種類の有効成分があります。食については、小枝の部分を焼却して灰を取って、その灰に水をかけて出た汁でコンニャクをつくります。また、枝から落ちた葉っぱに微生物を混ぜて肥料にします。あるいは芳香剤や、美容と健康の面ではお茶やシャンプーなど、限りなく使えると聞いています。韓国の化粧品会社に輸出もしています。
このように一企業がささやかに携わっていますが、これが1つの産業に発展すれば良いなと思います。 |
【澁澤】大変心強いご発言をいただきました。少なくともこの地域で、ヒノキの葉っぱやヒノキの小枝が価値を見いだされて有益になっていくというシステムができつつあるという話です。
要するにバイオマスというのは、今日のお話を聞いていても分かる通り、何か1つで全部解決するというのはなくて、考えられるもの全部使って、総持ちで地域をつくっていくことなのだと思っています。 |
【古林】実はヒノキ油、ヒバ油を新潟のほうから買っています。1?で2万、3万する単価です。下手な化学物質の匂いよりは館内を木の香りにしたいという目的で芳香剤として使ったり、ヒノキ風呂はいつまでも香りが続かないので、企業秘密をもらしてしまいますが、ときどきヒノキ油を使っています。これは商品価値がきっと出てくると思います。こんなに近くでそういった生産ができているとは知りませんでした。
それから間伐材の話で大事なことを言うのを忘れていました。景観をよくするために茅葺き屋根の小屋をつくっていただきましたが、これが観光のいいコンテンツになりました。1つではちょっと寂しいのですが、あれが10棟、20棟と真庭のビューポイントとか休んでいただく場所としてできてくると、結構な使用量になります。また、景観を整えるために周りに柵を作ったり、坂道の階段に使うと、相当量が使われると思います。せっかく良いものを作っていただいたのですが、1つでは犬小屋のでっかいのということになりかねません。先ほど言いましたように、真庭は岡山県一番の観光地ですから、コンテンツとして木材を使った茅葺き屋根の小屋も使えるのではないかと思います。 |
【澁澤】蒜山は大変な茅場です。茅を使う文化もだんだんなくなりますが、あれも本当に知恵の集積ですので、残していければと思います。
今、大きい茅の屋根を1つ葺き替えるのに1,500万といわれていました。茅葺きで食っていこうという若い人たちも、各地でずいぶん見られるようになってきましたので心強く思っています。その辺のコストが安くなると、いろいろ使えると思います。会津のほうでは茅葺き屋根だけが残っている集落がありますが、それが大変な観光資源になっていて、多くのお客さんを集めている現状があります。 |
まとめ |
| 【澁澤】だいぶ時間も長くなってまいりました。ここで、一番ご発言をなさりたかったのに黙って聞いているという地獄のような時間を過ごされた井手市長に、ご感想をお伺いできればと思います。 |
【井手】たくさんのご発言をいただきまして、私も市長という立場で大変勉強になりました。
冒頭にも言いましたが、今日お集まりの方々は、バイオマスはよく知っていて、関心も強い方々ばかりですが、一般の方々は「バイオマスというのは何だ?」ということなのです。
今日の話を聞いてみると、バイオマスというのは極めて身近で、日常生活の中から出てくる、あるいは地場産業から排出される、極めて厄介で価値のないものだ。廃油であるとか、し尿、糞尿、廃材、林地残材と、とうてい資源と言えるものでない。しかし、どうもこれは資源だ、あるいは環境にえらく役立つと、こういうことになってきたわけです。これはやはり時代の流れがあります。20世紀が石油を中心とした化石燃料を使いすぎて、CO2が非常にたまってしまった。地球温暖化に大きな影響を及ぼしてきた。言うならばこういう不幸な状況をとらえて、国の方も「バイオマス・ニッポン総合戦略」計画をつくって、それからどんどん広がってきたわけです。
バイオマスがわれわれの地域にどのぐらいあるのか。少ないのか、多いのか。例えば1年間に真庭市内から出る木質の廃材だけで13万5,000tです。それから糞尿が1年間に12万6,000t。林地残材にいたっては無限大です。これが役に立つときが来た。しかも真庭は岡山県では民間の知恵者がたくさんいるので、この件について、すでに数年間にわたって調査も研究も勉強もされてきた。そういう土壌がある。いよいよ真庭の出番だ。こういう状況なのです。
従って、私も市長になって、再生可能な循環型社会をつくるエネルギーの供給システムを確立することが大事だということで、バイオマスタウン構想をつくりあげてきたわけです。今10カ月ほど経ちますが、どのようなことをやってきたかというと、例えばバイオマスの環づくり交付金事業です。農水省のお金をいただいて、計画策定とかバイオマス利活用の推進事業をやっています。それからいろいろな方に知恵をいただきたいので、真庭市木質産業推進に係る懇談会を開きました。それから澁澤先生に委員長をしていただいて真庭市バイオマス利活用計画策定委員会を昨年12月に立ち上げて、いろいろ研究をしています。
その過程の中で、私も県会議員のときから努力していた、例のE3(混合ガソリン)の社会実験がいよいよできるようになりました。真庭市の公用車を使って社会実験をし、「これはいけるな」という結論のようです。これはエタノールが商業ベースに乗るか、乗らないか。ここが勝負だったのですが、だいぶいい方向に進んでいるわけです。
それから先ほど出た話でちょっと理解しにくい方もおられたかもしれませんが、NEDOの事業です。バイオマスエネルギー地域システム化実験事業という国の公募事業で、採択されると相当お金をもらえるのです。これに全国から39カ所が応募して、7カ所が採択されました。その1つが真庭市なのです。真庭市の事業名は「真庭市木質バイオマス活用地域エネルギー循環システム化実験事業」です。これは木質バイオマス利用の事業化に向けて取り組むということで、来年度から5年間やります。NEDOからいただくお金は6億8,000万円です。真庭市に入って、トンネルで地域の企業の方々に研究してもらう、実験してもらう、調査してもらう。そして果たしてそれが事業化に向けてどうなのか。例えばペレットのボイラーの使い方がどうかといったことを実験していただく。この間、補正予算で3,600万円ほどつけていただいて市も少しお金がいるのですが、そのようなことをいろいろやっています。
今日のお話を伺っても、まさに真庭地域でのさまざまな活動は全国でも先進地です。そういう地域であるけれども、まだ課題もある。これは今やっと始まろうとしたばかりですから、地域の方々がバイオマスに対しての意識がまだまだなのです。特に女性の方々がおよそ関心がない。われわれの地域は本当にバイオマスタウンと名のつくような町なのかと考え、地域の方々がみんな、バイオマスを利用した活動が地球環境に役立つのだ、地球環境保全に役立つのだと知ることです。
同時に、これが製品化・商品化していくといわゆる産業化されるわけですから、新しい産業が創出できるのです。ネコ砂やペレットは事業化しています。木質エタノールはこれからどうなるのか。木質エタノールをつくる実験は、日本でここが最初なのです。それから今、岡山の林原研究所で、プラスチックを木質でつくろうという実験をやっています。強度は今のプラスチックと全く同じですが、違うのは、土の中に入れると腐ることです。これが環境にいいわけです。木質プラスチック、バイオマスプラスチックが製品化されて20%でも流通できれば、大変な産業です。そうなると、われわれのところにある資源、金にならないと思われていた資源が金になるわけですから、元気が出るのです。
これをぜひ真庭市として支援していきたい。先ほど三浦部長が遠慮がちに財政支援を言われていましたが、やります。今、総合計画を作っていますが、その中で主要事業を5つ挙げています。その中の1つがバイオマスタウン構想の実現です。ですから財政支援をしていきます。しかしどのようにすればいいのか。行政だけがウンウン言っていてはいけないので、皆様方、あるいは企業、学者など多くの方々が一体となって地域を盛り上げていく。その中で行政も役割を果たしていきたい。そのように考えているところです。
今日のシンポジウムは大きな成果があったと考えています。ありがとうございました。 |
【澁澤】おかげさまで、つつがなくパネルディスカッションを進めてまいりました。
いくつか確認していただくことがあったかと思います。コストをみんなでどう分担するかということ。それからみんなで少しの手間を厭わずにかけていくこと。そして全員で合意形成をして、みんなで同じ方向を向いてやろうということ。要するに「みんなで」という部分が、バイオマスをこれから進めていくうえでは重要なことだと改めて感じてきました。少しでも多くの方々にこれに参加していただく仕組みづくりも、また進めていきたいと思っています。
江戸の川柳に「大家は尻でもちをつき」というのがあります。江戸時代にどういう職業があったかということを一度調べたことがあるのですが、職業の半分はリサイクル業です。長屋で出る糞尿を売る権利を大家さんが持っている。大家さんは長屋のオーナーではなくて管理人なのですが、管理人としてもらう給料よりも、長屋から出た糞尿を近郊の農家に売ることが大きい収入になっていた。つまり江戸時代は、そういうものをどうやって次の資源に変えていくかという、もう1つ別の世界がちゃんとあったのです。
先ほどの子どもたちの発表は、「自然をこのまま残してほしいです」という声が大きかった。ただ、必ず「真庭に仕事があって、真庭で働けるように」という一言がありました。つまりバイオマスを使っていくということは、私たちが近代化の中で石油が便利だからというだけで捨ててきたものを、石油を使わないで産業にしていこうという試みでもあります。みんなが少しずつ手を合わせて面倒なことをちょっとやるだけで、新しい雇用の場をつくろうという事業でもあります。それが彼らに残してやれる最大の宝物だと思っています。
このシンポジウムをきっかけに、皆さんにバイオマスタウンの実現に向かってご協力いただきたく思います。あるいは皆さんは当事者ですので、手を合わせて進んでいければ幸いだと思っています。 |